ひとりバス旅行で知った湯河原の魅力

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湯河原といえば、古くから冬でも温暖な温泉地として知られていますが、実は入浴して帰るだけではもったいないくらい魅力にあふれているんです。温泉街の周辺には、豊かな自然や歴史を感じさせる名所が点在していて、西村京太郎ファン必見の記念館もあります。

今回は東京からひとりで湯河原へバス旅行をした私の体験談を紹介します。

湯けむり情緒と呼ばれる所以

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湯河原を訪れたのは1月です。東京駅のターミナルでバスに乗り込む前は寒さに震えていましたが、湯河原駅前に降り立つと、さんさんと降り注ぐ陽光が春のように暖かく、コートが邪魔になるほどでした。温泉街へは駅前からバスに乗って約10分です。

箱根山嶺の麓を流れる清らかな千歳川沿いには、ホテルや旅館が並んでいます。この光景には「昭和の湯けむり情緒」という言葉がぴったりだと感じました。なお、千歳川は道の途中で藤木川に名称が変わります。

温泉の後は足湯へ

湯河原を旅先に選んだのは、この町の主な見どころがバス路線の沿道に集まっているからです。温泉でのんびり過ごした翌朝は、多くの万葉植物を見ることができる万葉公園を散策しました。この公園には万葉集にある約4500首のなかで唯一、温泉のことを詠んだ和歌の石碑も立っています。

その後、マイナスイオンに包まれた小道を進んでいくと、湯河原を愛した作家・国木田独歩さんの石碑が現れ、さらに9つもの足湯を備えた「独歩の湯」がありました。足湯はそれぞれ床の部分に特色が施されていて、ソフトに足ツボを刺激してくれます。

9つの足湯をすべてハシゴすれば、体の芯までポカポカですよ。

日曜日だけの特権

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もし訪問日が日曜日でしたら、万葉公園入り口の観光会館前で朝6時から開催される伝統の観光朝市をのぞいてみることをおすすめします。山海の名産品がお値打ち価格で購入できますよ。一例を挙げると、湯河原温泉名物の「きび餅」です。

これは源頼朝の命を救ったという伝説が残る縁起物です。製造しているお菓子メーカーは大正14年創業の老舗で、古くからの伝統製法を守り続けています。ひきたての上質なきな粉と、もっちりとした餅のハーモニーが絶妙です。

光風荘とは?

万葉公園に隣接して建っている光風荘は、あの二・二六事件における東京以外で唯一の現場です。東京で惨劇があった同日の朝、河野壽陸軍大尉ら8人の別動隊が、静養中だった牧野伸顕伯爵を襲撃したのです。このとき牧野伯爵は脱出に成功しましたが、事件後、河野大尉は自決しました。

この場所には牧野伯爵のひ孫にあたる麻生太郎氏の直筆を刻した碑文が立っています。二・二六事件が湯河原でも起きていたという史実を知らなかっただけに、この光風荘の見学は貴重な経験になりました。

首だけの大仏!?

光風荘を見学した後は、バスで湯河原市街の方へ戻り、千歳川に架かる橋を渡って福泉寺に行きました。ここは湯河原町と熱海市のちょうど境界で、福泉寺は熱海市の管轄となっています。かやぶき屋根の本堂が珍しかったですが、何より目を引くのは巨大な首だけが鎮座する釈迦像です。

通称名は「首大仏」です。もともとは名古屋城主の徳川光友が亡き母の供養のために鋳造したもので、名古屋時代はちゃんと全身があったとされています。その後、首から下がどこへ消えたのか、どういう経緯で湯河原へ移転されたのかなどの詳しい由来は、明らかになっていないそうです。

有名作家の記念館

福泉寺から歩いて数分の場所には、鉄道ミステリーの巨匠・西村京太郎氏の記念館があります。西村氏は大病を患ったのを機に、長年暮らした京都から温暖な湯河原へ転居したのです。この記念館には600冊にも及ぶ膨大な作品や鉄道ジオラマをはじめ、貴重なコレクションが展示されていて、多くのファンが訪れていました。

私がかつて夢中になって読んだ作品もたくさんあり、十津川警部が活躍する懐かしい名列車の思い出が脳裏をよぎりました。入場券にはワンドリンク代も含まれているので、見学後は1階にある茶房で小休止ができますよ。さらに西村氏は、この記念館の近所に住んでいるそうです。

ときどきコーヒーを飲みに来るらしいので、運が良ければ本人に会えるかもしれませんよ。

この町のグルメ

湯河原町の住宅街の一角にある高松食堂は、地元の常連客が集うアットホームな人気店でした。駅から少し離れているものの、評判の味を堪能したいと訪れる遠来の旅行客も少なくないそうです。店員さんにおすすめを聞くと、「まずは揚げ麺を試してみてはいかがでしょうか」と言われました。

揚げ麺を頼んだら、まず豪快に盛られたボリュームに驚かされますが、具材は野菜が多く、辛さもマイルドで箸がどんどん進みました。やや緩めの餡と麺の相性もいいですよ。最後は新幹線の高架に近い五所神社を訪問しました。

この神社は、高さ36メートル、推定樹齢850年の大楠が有名です。パワースポットの空気を存分に吸い込み、私は今後の人生の静穏を祈願しました。帰りのバスで西村京太郎のミステリーを読みふけるうちに時間を忘れ、いつの間にか真冬に逆戻りの東京駅に到着していました。

福島交通のバス旅に参加した!楽しい旅がそこにはあった!